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深夜の感情エッセイ

私の中の
小さいおじさんが、起きた

2026年6月8日 | 深夜の感情エッセイ

最近読んでいる本に、小さいおじさんが出てくる。

そのおじさんが言うことが、
なぜか今の私の人間関係と重なりすぎて、
1ページごとに止まってしまう。

本を読み終えたいのに、なかなか進まない。
字は追えているのに、どこかで引っかかって、
スマホを裏返して天井を見てしまう。

「ああ、そういうことか」ではなくて。
「あの人、まさにこれだった」という、
ちょっと静かな衝撃。

字を追いながら、どこか別のことを考えていた。

本を読む夜
本の感想を書きたいわけじゃない。
この本を読んで、私の中の何かが起きた、という話をしたい。

小さいおじさんというのは、比喩として使われることがある。

自分の中にいる、年老いた感覚。直感。積み重なった観察。
「なんとなくこれは違う」と静かに言う、あの声。

若い頃はその声を、「気にしすぎ」「考えすぎ」と抑え込んでいた。
でも今になってみると、あの声は大体合っていた。

本の中の小さいおじさんも、そういう存在だった。
うるさくなく、でも正確で。
「それ、見えてるよ」と、ただ静かに言う。


手を繋ぐだけで、分かることがある

恋愛の話をするとき、みんな言葉のことばかり言う。

でも私が気になるのは、言葉よりもっと手前のところだ。

たとえば、手を繋ぐ動作。

さりげなく繋いでくれる人と、
どこかぎこちなく繋いでくる人では、
受け取る側の感覚がまったく違う。
どちらが正しいとか、どちらが好きとか、そういうことじゃない。

ただ、その人の中に「相手への感覚」があるかどうかが、
少し見える気がする。

言葉は選べる。でも、動作は漏れる。

窓の外で、夜が静かに続いていた。

夜の孤独

品性というのは、大きな場面で出るものだと思っていた。

でも実際は、些細な動作の中にこそある。
座る角度。歩くペース。ドアを開けるタイミング。
「行こう」と言うときの声の出し方。

私の中の小さいおじさんは、
そういうところを、だまってずっと見ている。


魂の年齢、という言葉をスピリチュアル文脈で聞くと、少し引いてしまう。
でも、人を見ていると、確かにそれに近い何かがあると思う。

生きてきた量が多い人ほど、愛情表現が静かになる気がする。

大げさに言わない。でも、ちゃんと伝わってくる。
言葉を使いすぎない。でも、こちらの温度には敏感だ。

逆に、表現が大きくて、言葉が多いのに、
なぜかこちらが受け取れない、ということもある。

「なんで?」とずっと思っていたけれど、
最近になって少し分かった気がする。
言葉と体積が合っていない、ということなのかもしれない。

静かな人が、怖い人ではなくなった。
それはたぶん、私が少し経験を積んだということだと思う。

見えないものを感じ取ることは、変なことじゃない

見えないものを感じ取ろうとすることを、
「勘がいい」と言う人もいれば、「考えすぎ」と言う人もいる。

でも最近思うのは、それは勘でも霊感でもなくて、
ただ長い観察の蓄積なのかもしれない、ということ。

この人は今、緊張している。
この人は、笑っているけれど本当は機嫌が悪い。
この人は、優しくしているけれど、それは習慣で、私を見ていない。

これを言語化するのは難しいけれど、
感じること自体は、べつに不思議でも特別でもない。
ただ、たくさんの人を、長く、静かに見てきただけだ。

私の中の小さいおじさんも、
おそらくそうやって年を重ねたのだと思う。


雑に扱われた経験というのは、できれば持ちたくない類のものだ。

でも今になると、それがあったから分かることが、たくさんあると思う。

丁寧に扱われたとき、それがどれだけ当たり前じゃないかが分かる。
急かされなかったとき、それが普通じゃないことに気づく。
名前を正確に呼んでもらったとき、小さくほっとする。

雑に扱われた側は、細かいことに気づきやすくなる。
それは傷跡でもあるけれど、同時に、感度でもある。

言葉になる前に、書くことがある。

日記と内省
丁寧さの価値を知っている人は、
丁寧さを受け取るのが上手い。

うまく受け取れない時期があった。
せっかく丁寧にしてもらっているのに、どこか信用できなかったり、
「何か裏があるのでは」と身構えてしまったり。

それも、ちゃんと経験のせいだった。
私のせいではなく、まだ慣れていなかっただけだった。

今はもう少し、受け取れるようになった気がする。


本を閉じて、スマホを置いて。

天井を見ながら、ぼんやり考えた。

私の中の小さいおじさんは、ずっとここにいたのかもしれない。
若い頃は声が小さくて聞こえなかっただけで、
あの頃から、ちゃんと何かを見ていたんだと思う。

そして今、また何か言っている気がする。

何を言っているかは、まだうまく言葉にならない。

でも、急がなくていい。
また1ページ読んだら、続きを教えてくれると思う。